マイツリー
――― いつもお世話になってばかりです ―――
米国のシルグァスタインによる名作絵本『おおきな木』ではないですが、人は木に世話になっているばかりです。夏には 木陰を、秋には木の実を与えてくれて、冬には寒風を遮ったりしてくれます。二酸化炭素を吸ってくれるし、子どもに木登 りも教えてくれます。あるいは、その身を差し出し、家や家具や紙になってくれることもあります。それなのに、恩着せが ましいことは一つもいいません。
――― 黙っているから好きだ ―――
詩人田村隆一の『木』が「木は黙っているから好きだ」に始まり「木、ぼくはきみのことが大好きだ」という直截(ちょ くせつ)な表現で締めくくられているのを思い出します。
――― そこにあるだけで、勇気を与えてくれる ―――
ただ、そこにある、というだけで人に勇気を与えてくれる木もあります。岩手県陸前高田市の高田松原で、とてつもない 津波に耐えて、たった一本だけ残ったあの松です。人呼んで「奇跡の一本松」七千本がことごとくなぎ倒された中で、一本 だけ生き永らえたのでした。日本中の多くの人々はそこに「希望」を見ました。
――― 木の授業 ―――
はままつフラワーパーク理事長、塚本こなみ氏が小学校 6 年生に行った「木の授業」です。校庭にある樹木から自分の木 を一本ずつ選んでもらいました。「マイツリー」です。そして、子供たちに宿題を出しました。選んだマイツリーと話をする こと。そして、どんな話をしたかを日記に書くことです。
・1 週間後、全員が「木とは話が出来ない」
・2 週間後、全員が「木とは話せない」
・3 週間後、「今日、運動会があった。僕の木が応援してくれたから僕は 2 位になれた。木にありがとうとお礼を言った」 ・4 週間後、「今日、学校で嫌なことがあった。木に聞いてもらった。心が楽になった」友達にも家族にも言えないことを木 に話したのです。その子は黙ってすべてを受け入れてくれる友を見つけました。「木の授業が成立した瞬間でした」と塚本氏 は言っておられました。確かに、学校とは「木の交わるところで学ぶ」と書き、家庭とは「家と庭」と書きますね。
――― 子供たちの心、育つ場所 ―――
道端に咲く季節の雑草たちに時に心奪われ、木に咲く花から季節を感じ、家の庭に家族みんなで花を植えたりする時、そ んな中で子供たちの心も育っていくのかも知れません。
聖書のことば。「・・・野の花がどうして育つのか、よく考えなさい。・・・」